「歯列矯正をしたいけど、周囲に気づかれたくない」
「マウスピース矯正に興味はあるけど、自分もできるのかな?」
歯並びにコンプレックスを抱いている方のなかには、このような疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。
マウスピース矯正とは、透明な樹脂製の装置を使用して歯並びを矯正する方法で、見た目が目立ちにくいことから近年人気を集めています。
また、取り外し可能なため、歯磨きがしやすい点も人気の理由の一つといえるでしょう。
しかし、マウスピースでは大きく歯を動かすことができないため、全ての症例に適応するわけではありません。
例えば、重度の叢生(そうせい)や骨格から歯を動かさなければならない症例では、マウスピース矯正を選択できない場合もあります。
そこで本記事では、以下の内容について解説します。
- マウスピース矯正に向いている症例
- マウスピース矯正が難しい悪い歯並びの症例
- マウスピース矯正ができない他の原因
- マウスピース矯正ができない場合の対処法
- 悪い歯並びのマウスピース矯正に関するQA
どのような症例がマウスピース矯正に向いているのか気になる方は、ぜひ参考にしてください。
マウスピース矯正に向いている症例
マウスピース矯正に向いている症例は、以下の5つです。
- 軽度から中等度の叢生(歯のガタガタ)
- 軽度の開咬(前歯が噛み合わない)
- 軽度から中等度の過蓋咬合(噛み合わせが深い)
- 軽度の空隙歯列(すきっ歯)
- 軽度の出っ歯や受け口
一般的に、マウスピース矯正は軽度から中等度の不正咬合に適しています。
マウスピース矯正が難しい悪い歯並びの症例
マウスピース矯正が難しい悪い歯並びの症例は、以下の4つです。
- 重度の叢生(そうせい)
- 受け口の症状がひどい場合
- 出っ歯の症状がひどい場合
- 埋伏歯がある場合
順番に説明します。
重度の叢生(そうせい)
叢生(そうせい)とは、歯が前後にガタガタと並んでいる歯並びをいい、八重歯も叢生(そうせい)の一種です。
顎と歯の大きさのアンバランスさが原因で歯が綺麗に並びません。
叢生(そうせい)は、歯が重なっているところに食べ物がはさまりやすく、歯ブラシが細かいところまで行き届かないため、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。
また、歯磨きがしにくいイメージから、不潔な印象を持たれる場合もあるため、早めに改善した方が良いでしょう。
軽度の叢生(そうせい)の場合はマウスピース矯正で改善する可能性がありますが、重度の叢生(そうせい)の場合は難しいかもしれません。
なぜなら、マウスピースでは大きく歯を動かすことができないからです。
叢生(そうせい)で悩んでいる方は、自分の症例がマウスピース矯正に適応するか歯科医師に相談してみるとよいでしょう。
受け口の症状がひどい場合
受け口とは、上の歯よりも下の歯が前に出ている状態をいい、反対咬合や下顎前突ともよばれます。
受け口の原因は、下の歯が前に傾いていたり、上の歯が内側に傾いていたりする歯性のタイプと、上顎が小さく下顎が大きい骨格性のタイプがあります。
歯性の場合、歯の傾きが軽度であればマウスピース矯正で改善できるでしょう。
しかし、歯の傾きがひどい場合や、骨格性により外科手術も併用しなければならない場合は、マウスピース矯正が適応しない可能性があります。
受け口の程度については自己判断が難しいため、歯科医院で精密検査を受けてマウスピース矯正が適応できるか判断してもらいましょう。
出っ歯の症状がひどい場合
出っ歯とは、上の前歯が前に突出している状態で、上顎前突ともよばれています。
上顎の骨が過剰に発達していたり、前歯が外側に傾いていたりすることで出っ歯の状態になります。
出っ歯は、口を閉じにくいため口腔内が乾燥しやすいです。
その結果、細菌が繁殖し虫歯や歯周病になりやすくなるため、早めに改善した方が良いでしょう。
しかし、出っ歯の状態によっては、歯を大きく動かさなければならないため、マウスピースでは適応できない可能性があります。
埋伏歯がある場合
埋伏歯とは、顎の骨の中に埋まっていて、正常に生えてこない歯のことをいいます。
一般的に、犬歯が埋まっている場合が多いです。
犬歯は歯根が長く、噛み合わせや歯列全体に大きく影響する重要な歯のため、ワイヤー矯正を使用して歯を少しずつ外に引き出さなくてはなりません。
マウスピース矯正だけでは対応することが難しいケースといえるでしょう。
マウスピース矯正ができない他の原因
マウスピース矯正ができない他の原因は、以下の3つです。
- 重度の歯周病
- インプラントが入っている
- 永久歯が生え揃っていない
それぞれを説明します。
重度の歯周病
歯周病とは、口腔内の細菌によって歯の周りの組織が炎症を起こし、歯を支える骨が溶けてしまう病気です。
歯を支える骨が減少することによって、歯が揺れたり痛みを感じることもあるでしょう。
歯列矯正では、歯に少しずつ力を加えて歯を移動させます。
しかし、重度の歯周病によって歯を支える骨が少なくなると、矯正の力に耐えられず、歯が抜けてしまう可能性があるのです。
そのため、マウスピース矯正だけでなく、すべての歯列矯正をおこなうことが難しいといえるでしょう。
インプラントが入っている
インプラントとは、失った歯の顎にインプラント体とよばれる人工の歯根を埋め込む治療のことをいいます。
歯列矯正では、歯根膜の吸収と再生によって歯を動かしますが、インプラントには歯根膜が存在しないため、力を加えても動きません。
さらに、インプラントの数が多くなると動かせない範囲も大きくなるため、歯列矯正が難しくなります。
歯列矯正を検討している方は、インプラント前に計画を立てる必要があるでしょう。
永久歯が生え揃っていない
通常、マウスピース矯正は永久歯が生え揃った状態でおこなう治療です。
まだ永久歯が生え揃っていない子供には、従来のマウスピースは適応できない可能性があります。
しかし、最近では子供向けのマウスピース矯正が普及しています。
3D検査技術によって成長過程を考慮した治療が可能になり、将来の歯並びを予測しながら治療計画を立てることによって、成長期の子供にも対応できるでしょう。
マウスピース矯正ができない場合の対処法
マウスピース矯正ができない場合の対処法は、以下の2つです。
- ワイヤー矯正を検討する
- 外科矯正を検討する
順番に説明します。
ワイヤー矯正を検討する
マウスピース矯正ができないと判断された場合、ワイヤー矯正を検討しなければなりません。
ワイヤー矯正とは、1本1本の歯にマルチブラケットという装置をつけ、そこにワイヤーを通して歯を移動させる方法です。
幅広い症例に対応できるワイヤー矯正ですが、見た目が目立ちやすいデメリットがあります。
しかし、最近では歯の色に近いマルチブラケットやワイヤーが普及しているため、従来に比べると目立ちにくいです。
また、裏側矯正といって歯の裏側に装置をつける方法もあります。
専門的な技術を必要とするため、費用がかさむ傾向ですが、周りの人に気づかれずにワイヤー矯正をしたい方におすすめの矯正方法です。
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外科矯正を検討する
骨格が原因の出っ歯や受け口の場合、外科的な歯列矯正が必要になるかもしれません。
なぜなら、マウスピース矯正では、骨格を動かすことができないからです。
通常、外科矯正では、ワイヤー矯正で歯の噛み合わせを改善した後に、外科手術によって顎の骨を移動させたり削ったりします。
ワイヤー矯正だけでなく外科手術も組み合わせることによって、歯並びや噛み合わせだけでなく、顔全体のバランスも整うでしょう。
悪い歯並びのマウスピース矯正に関するQA
以下に、悪い歯並びのマウスピース矯正に関する質問と回答を3つ紹介します。
- マウスピース矯正ができないと言われた場合は?
- 歯並びが悪いとマウスピース矯正は痛いですか?
- 市販のマウスピースでも矯正できますか?
順番に解説します。
マウスピース矯正ができないと言われた場合は?
マウスピース矯正は歯を大きく動かすことができないため、重度の出っ歯や骨格から歯を動かさなければならない場合は、適応しない場合があります。
その場合、ワイヤー矯正を選択しなければなりません。
しかし、理由が納得できない場合や、どうしてもマウスピース矯正を諦められない場合は、
他の歯科医院に意見を求めることをおすすめします。
歯列矯正はお金も時間もかかるため、しっかりと納得してから治療を選択しましょう。
歯並びが悪いとマウスピース矯正は痛いですか?
マウスピース矯正では、マウスピースを装着したときに圧力がかかるため、圧迫感のある痛みを感じる場合があります。
特に、マウスピース矯正開始後や、新しいマウスピースに交換した直後は痛みを感じやすいでしょう。
一般的に、歯の移動距離が大きいほど痛みを感じやすいですが、痛みの感じ方には個人差があるため一概には言えません。
痛みは3日ほどでおさまる方がほとんどですが、我慢できない場合には歯科医院で相談しましょう。
市販のマウスピースでも矯正できますか?
市販のマウスピースでは矯正できません。
インターネット上では、歯科医師が介在しない歯列矯正用のマウスピースが出回っていますが、歯列矯正は正確な診断や治療計画を立ててからおこなう医療行為です。
独自の判断で誤ったマウスピースを使用した場合、効果が保証されないだけでなく、逆に歯並びを悪化させる可能性があるため、絶対にやめましょう。
まとめ
悪い歯並びはマウスピース矯正によって改善することが可能です。
しかし、どの症例にも適応するわけではありません。
歯を大きく動かさなければならない場合や、骨格から歯を動かさなければならない場合には、ワイヤー矯正や外科矯正を選択する必要があるでしょう。
自分の歯並びがマウスピース矯正に適応するかどうかは、歯科医院で相談することで診断されます。
周囲に気づかれずに歯列矯正をおこないたい方は、歯科医院で相談してみてはいかがでしょうか。

コラム監修者
はぴねす歯科緑地公園駅前クリニック 院長 松浦 裕矢
大阪大学歯学部を経て、兵庫県内の医療法人、はぴねす歯科石橋駅前クリニックで勤務した後、現在ははぴねす歯科緑地公園駅前クリニックの院長を務めています。患者様一人ひとりの希望と健康に合わせた最適な治療を提供し、治療前にはしっかりと説明を行い、納得の上で進めています。矯正治療やセラミック治療を中心に、患者様の希望に寄り添った治療プランを提供し、日々患者様の健康をサポートしています。
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